ハバロフスク日本人会会報        りっか 六花 рикка           2009冬・Vol.29

 

新年明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします!

 

☆忘年会、和やかに☆

 2008年を忘れる会が、124日(木)19時より、レニングラーツカヤ通りとウスリースキイ並木道のT字路の角でプラチナアリーナの裏手のバプテスト福音教会の並びのメキシコ料理レストラン『チリ(ЧИЛИ/Chilly)』で催されました。

 一卓に数人ずつがゆったりと腰かけて食事を共にしながら中南米の音楽に心を任せつつ和やかな一夕を過ごさせてさせていただきました。途中でマークシート方式の楽しいクイズも行われ、群を抜く成績の方々に素晴らしい賞品が贈られました。たいへんお忙しいなか心温まるすてきな催しを企画し実行してくださいましたみなさま、まことにありがとうございました。

 

☆日本語クラブのイヴェントに参加して☆

 1220日(土)の午後に極東国立人文大学6号館3階の一室で催された日本語クラブのイヴェントに参加させていただきました。小さな玩具やキャンディーが楽しげに吊るされたお正月のツリー・ヨールカやそれは美しい心尽くしの壁の飾りに彩られたお伽話のような温もりに溢れた空間で繰りひろげられる、愉快なパントマイムゲームや心に沁みる紙芝居『かさこ地蔵』、ユーモアたっぷりの日本語劇や両国の伝統と文化についてのスピーチ、プレゼント交換などの、たいへん盛りだくさんなプログラムに、しばし日常を忘れさせていただきました。或るサハ共和国出身の学生さんはイシアフと呼ばれるヤクート民族の夏至のお正月についてお話しくださいましたが、拙宅に帰ってから以前当会会員の方に戴いた井上靖著『おろしや国酔夢譚』を開いてみますと、2章のおしまいのほうに馬乳酒祭(イシアフ)のことが出ており、そのお正月の歴史の永さを想ったことでした。会のおしまいのほうでは、みんなで、手をつないでホロヴォードと呼ばれる輪舞を踊りながら、あらかじめ歌詞をご用意くださったロシヤのお馴染みの新年の童謡『森でヨールカが生まれ』(曲:レオニード・ベークマン、詩:ライーサ・クターシェヴァ)を合唱しました。はて、編集子が歌を歌ったのは何年ぶりのことでしょう。すてきな会を催してくださったみなさま、まことにありがとうございました。

 


森でヨールカが生まれ、森でその子は育ちました、

冬も夏もすらりとしていて緑色でした。

 

吹雪がその子に歌ってあげました、「おやすみ、ヨールカ・・・、ねんねんよ。」

寒さが雪でくるんであげました、「いいかい、凍えなさんなよ。」

 

臆病者の灰色のノウサギがヨールカのしたで跳ねまわり、

ときどきオオカミが、怒りっぽいオオカミが、小走りに通りすぎていきました・・・

 

ほら、滑り木のしたで雪の軋む音が密林に響きわたり、

脚にむく毛のあるウマが急いで駆けていきます。

 

ウマは荷橇を曳いており、荷橇には一人の男。

彼は私たちのヨールカを根もとから伐り倒しました・・・

 

今おまえはここに、おめかしをして、私たちのお祭にやってきました、

そしてたくさんの喜びを子供たちに運んできました。


 

☆極東奇譚・その二/田中隆☆

 

トランバーイの花畑

 

気をつけて見ないと解からないほど細かい雪の降る或る日の夜、私は、トランバーイに乗ったのです。春も真近と思われる暖かい日でした。夜になっても、氷点下3度くらいです。

ムラヴィヨフ・アムールスキー通りの停車場で、小学校の高学年ぐらいの女の子と、お母さんが乗ってきました。

さほど混んではいなかったのですが、さりとて、空いた席があるわけでもありません。

私の隣に立っていました。

トランバーイはごとんごとんと坂を下り、うんうんと唸って坂を上り、レーニン通りを過ぎた頃、女の子が、霜の降りたトランバーイの窓に落書きをし始めたのです。

黒い毛糸の手袋で、ちょいちょい、っと窓に触れると、黄色いガーベラのような花が、ガラスの上に現れました。勿論、色が付いていたわけではありませんが、車内の黄色いタングステンランプの光とあいまって、そんな風に見えたのでしょう。

まだ何か、描いています。

やっぱり花でした。花弁の細い一重の花。紫色でした。

描き続けました。ひなぎく、ばら、チューリップ、と、たくさんの花を描いていきます。トランバーイの窓は、小さな花壇のようになりました。赤、白、黄色、ピンク、など、色が付いていないのに、見詰めているとわかるのです。

十本を越えた頃、私も手伝ってみたくなり、窓ガラスの上の方、空いた場所にお日様を描きました。黄色いお日様です。

女の子は、びっくりしてこちらを見ました。

無理もありません。しゃぐまの様な狸の帽子を被った変な東洋人が、ぎこちない手つきでお日様を書き足したのですから。チュクチャだと思ったかもしれません。

でも、彼女の花壇にぽかぽかと日が当たっているのに気が付くと、にこっと笑って、花壇の地面から顔を出したモグラの絵を描いたのです。

それは、長い冬を過ごし、春を待ちわびている私達の様でもありました。

もしかしたら、彼女も、今日はとても暖かかったので、春を待ちきれず、自分だけの花壇をこしらえてみたのかも知れません。

でも、一人きりの花壇じゃなくなって嬉しかったのでしょう。

スダヴェールフィの停車場で、トランバーイを降りてゆく彼女は、私に向かって手を振ってくれましたから。

彼女が見た、車内灯の明かりで浮き上がったお花畑は、車内から見るよりも鮮やかだったかも知れませんが、私が降りた停車場から、お客に行く家の方とは方角が違っていたので、結局見ることは出来ませんでした。でも、何とは無しにうきうきして、足取りも軽く、雪に隠れた氷を見逃して、すてん、と、背中から転んでしまいました。息が止まりました。でも、冬の厚着に守られて、無事、お客になることが出来たのです。

 

☆山下雅司さんの小説「時空の旅人」☆ 〜連載・第16回☆


其之 三 

 

 

 高木は一人で興奮して、夢中になって二人に説明していた。

 突然、マリーンが鋭く言葉を発した。

「狼だ。気を付けろ!」

 マリーンの指さす方を見ると、狼とも山犬とも見分けの付か無い獣がこちらを見ていた。しかし別に襲ってくる気配は感じられない。

「一寸待ってください。尻尾振っていますよ」

「本当だ。尻尾振っている」

 その時、突然鋭い口笛が風に乗って聞こえてきた。

「タロウ!」

 その声が聞こえる方向に狼は走り去った。

 マリーンの指示で素早く巨石の後ろに三人は身を隠した。

 暫くすると、すらりとした一人の若い娘が現れた。

 摘み草をしているらしく、足元を見回しながら巨石に近づいてきた。

 娘の廻りを狼がじゃれついて走り回っていた。

 薬草らしき摘み草の束を巨石の脇に置き、もう一つ抱えていた黄色や白、紫、ピンク、色とりどりの、可憐な野の花の束を巨石の前に置くと、手を合わせ拝み始めた。

 娘は長い時間、手を合わせていた。それが終わると巨石の廻りの草取りを始めた。

 何か口ずさんでいる様だが歌声は届かない。どうやらこの場所を掃除に来らしい。

 高木は真っ直ぐに伸びた、美しい黒髪に気がついていた。

「出にくくなったな。驚かさないように偶然を装って、下から登ってこよう」

 そう言うとマリーンは二人を促し、気付かれない様に遠回りしてその場所を離れた。

(スタイルの良い奇麗な娘さんだな)高木は心の中で呟いた。

 

 狼が吠えた。其に合わせて娘は顔を上げてこちらを見た。

 にっこりと微笑んだ。何とも言えない素敵な笑顔だった。しかし、何も言わない。

 話せないのではなく、言葉が不自由なのではないかと高木は思った。

 マリーンは間近で見た娘の美しさに言葉を失っていた。

 後ろにいた高木と杉浦は其に気が付かなかった。

 余りの沈黙の長さに絶えかねて、高木はマリーンを後ろから突いた。

 マリーンは夢から覚めた様に再び娘の眼を凝視した。

「別に驚きませんわ。この地は何があっても不思議ではありませんもの」

 突然、娘の口から日本語が語られた。

 杉浦と高木は顔を見合わせ、驚きの為に言葉も出なかった。

「日本人なのですか?」

 やっと掠れた小さな声が高木から発せられた。

「ええ、気がついたらこの村外れで・・・、次の朝、村人に保護されました」

 娘は明るく答えた。

「何でこんな所を掃除しているのですか?」

 杉浦がやっとショックから立ち直り質問した。

「私、見習いなのです。魔女の・・・」

 そう言うと娘は微かに微笑んだ。

 マリーンはその可憐な笑顔を放心の状態で見つめていた。

 

「心の中に話しかけられたのです(驚かないでくださいって)。それに対して自然と出た言葉が日本語だったのです」

「それはマリーンのテレパシーによる語りかけなのです。私も彼に助けられて筏の上で最初、心の中に直接語りかけられました」

 高木はマリーンとの出会いから、現在までの経過を「メグミ」と名乗った娘に、説明した。先程、それぞれの自己紹介が終わっていた。

「とりあえず、メグミさんにその老婆の所に案内してもらいましょう。そしてその老婆から集落のリーダーに紹介してもらうと言うのはどうでしょう?」

 杉浦の提案に誰も異存は無かった。

 墳丘墓のある小高い丘の上から、草原の北西方向に八〇〇メートルぐらいの所に、見事な富士山型のシルバリー・ヒルが、地平線よりやや頭を出す様に下方に間近に見える。

(あの人工の丘陵も多くの謎に包まれている)

 そう思いながら高木は眺めていた。

 心地よい風が吹き抜けて、高木の額から汗を拭い去った。

 マリーンが予言した「出会いの星が近づいている」と言ったのは、メグミとの出会いの事を予言していたのではなかったかと、高木は漠然と考えていた。

 

 村人に合うこともなく、村外れの老婆の小屋に入り、老婆との話しも一区切り付いたところだった。マリーンと老婆は同じ呪術師として、話が合うようで情報交換をしている。 マリーンは傍らに置いてある袋を引き寄せた。

 鹿の胃袋の栓を抜き、中の匂いを嗅いでいる。老婆に何事か話しかけると、老婆は乾燥した干し肉の様なものと、胡椒の様な実の入った木の器を持ってきた。

 マリーンはそれらを少しずつ袋の中に入れると、囲炉裏の上の木組の下に吊るした。

「何ですかそれは?」

 薬草に興味のあるメグミは好奇心に駆られて質問した。

「魔法の水となるものです」

 と、片目でウインクしながらマリーンは答えた。

 高木と杉浦は中身を知っている。マリーンの冗談だと思った。

「後で飲ませてもらえます?」

「もちろんです」

 老婆は何事かマリーンに話しかけ、小屋を出て行った。村領に会いに行ったのだろう。「ここが何処だかご存じですか?」

「南米辺りの原住民の集落ではないでしょうか?」

 メグミは自信無さげに答えた。

「イギリス、イギリスですよ。ロンドンから車で南西に二時間程の処です」

 杉浦が冗談めかして言った。

「ストーンヘンジ、ご存じですか?」

 高木は再び質問した。

「一度、見に行ったことがありますわ」

「その近くなのです」

「・・・・・・・・」

「信じられないかも知れませんが、時代が違うのです」

「紀元前二千年の世界、新石器時代だそうですよ。日本で言うと縄文時代だ」

 杉浦の少し遣る瀬無い、投げやりな言葉が続いた。

「そんな・・・・現代の世の中で、そんなことが・・・・」

 メグミには如何しても、有史以前と言う事が信じられない様であった。

「どうやら私達は時空を旅する旅人となり、タイムトラベルをしたと思われます」

 高木は説明した。

 ここは新石器時代のイングランドで、ストーンヘンジの遺跡のある処から、少し北の方角にあたる場所で、二〇世紀で私達はエィブベリの遺跡群と呼んでいる処だと言った。「今日見たあのお墓は、ウエスト・ケネットのロングバローと言われる墳丘墓で、間違いないようです。人工の丘陵はシルブリー・ヒルと言われる物です。驚きでしょうが現実を受け入れて、対処していくしかありません」

「私達はわざわざ、あのお墓を見に来たのです。現実を受け入れる証として・・・」

 杉浦の言葉に高木も頷いた。

「おかしいとは思っていました。余りにも原始的な生活ですので、しかし、南米の未開の原住民が住む処に、飛行機が不時着したと思っていました。誰もいない飛行機から抜け出て彷徨歩き、この村に辿りつき保護されました。言葉は通じないし、成るようにしかならないと諦めていました」

 若い娘に似合わず達観した落ち着いた話し方だった。

「メグミさんは飛行機から抜け出てと言いましたね。それじゃ近くに飛行機の残骸があるはずだ」

 と杉浦は呟いた。

「それなのですが・・・私も飛行機を探して何度もあの場所に行ったのですが、飛行機は見当たらないのです。場所は間違いありません。不思議なことですわ・・・・」

「それでこの地は、何があっても不思議では無いと言う。先程の言葉が納得できますね」 高木は労るように言った。何時しか小屋の外には夕闇が訪れていた。

 

 老婆が戻って来て、戸口の所で村領と会える様に話が付いたと伝えた。

 マリーンは小鹿の袋を背負うと立ちあがった。三人は後にしたがった。

 歳の頃は五十を越しているように見える。茶色の太い眉毛が意志の強さを感じさせる。栗のような大きな眼が澄んでいて、慈悲深さが感じられる。背はさほど高くはないが、引きしまった筋肉を羊の毛皮が包んでいた。この集落の村領、バンドルだった。

 マリーンは訪問の経緯を語り小鹿の袋を差し出した。

 話を聞き終わったバンドルは、傍らに控えていた供の者に言った。

「器をまわせ!」

 バンドルのその言葉を聞き、マリーンの顔にやっと笑顔が浮かんだ。

 村領の小屋には集落の主だった者達が集められていた。

 全員に瓢たんで作った様な御椀が配られた。メグミがマリーンの持参した袋の中のものを全員に注いだ。バンドルの合図で全員が、一斉に口に含んだ。

(これはいける!)

 同じ思いだったらしく杉浦も頷いている。一寸、若い感じのワインの味に似ていた。

 何処と無くボジョレ・ヌボーのような味わいが、口の中一杯に広がった。

 その時(身体の体温で温めながら発酵させていたのだ)と高木はやっと気がついた。

 親睦の貢ぎ物としては最高の贈り物だった。

 バンドルは中身を知っていて、仲間として迎える承諾のしるしとして、全員で乾杯したのだとやっと気がついた。アルコール分を含んでいるのだろう。

 全員に陽気な雰囲気が広がった。

 アルコールなんて何か月振りだろう。高木も杉浦も直ぐに酔いが回ってきた。

「魔法の水」とはマリーンも粋なことを言う。

 ほんのりと目許を赤らめたメグミを、マリーンは眩しそうにいつ迄も見つめていた。

 高木はこの集落の語り部の話しが聞きたかった。

 この一族の歩んで来た語り継がれた物語、この集落の歴史が知りたいと思った。

 マリーンにその事を言うと、マリーンは一人の腰の曲がった老人を伴い、高木の傍に来て座った。髪も髭も真っ白で、雪の中に落とされた二つのどんぐりの様な眼が見えた。

 相当な高齢に見えるが年齢は見当付かない。仙人の様な雰囲気を漂わせて、微かに高木を見て微笑んだ。

「何でも聞いて下さい。私の知る限りの事は答えましょう」

 マリーンの通訳で高木の質問に答え始めた。

「東の大陸から来ました。遠い昔の話しです。大河の辺の緑豊かな土地でした。羊を飼い土器を焼き人々は豊かに暮らして居ました」

「大陸にいた遙か昔から土器を焼いていたのですか?」

 驚いて杉浦が聞き返した。

「この地に土器の造り方を伝えたのは私達の御先祖です」

「ビーカー族と言われる人達ですね。ライン河の辺に住んでいた人達だ」

 と杉浦が言った。

 多分、この一族もケルト族の祖先にあたる人達なのだろう。

「この島に渡り、北に向かった一族もいたが、北の方は山並が険しかった。そこで我が一族を率いる先祖は、羊の群れを南に向けた。羊を追って豊かな草を求めて、南に下りこの地に定住した」

 と、語り部は言った。

「いつ頃この地に定住したのですか?」

「この地は私で八〇〇代目と聞いています」

「大きな立派な集落ですね。あの丘はいつ頃のものですか?」

「先祖が住み着く前からあったと聞いています。私達のこの集落も人々の暮らしも安定して、豊かに暮らせるようになりました。自然に感謝の気持ちを示し、御先祖に報告しなければなら無いと呪術師が予言した。私達は感謝の気持ちを大地に描く用意をしているところです」

「何処にですか?」

「集落の外れに大きな濠の掘られた聖域と言われる処があります。そこに大きな石を並べようと言う計画が進んでいます。既に石を探す者は旅立っています」

「凄い!凄い!これからなんですね。ストーン・サークルが作られるのは、私が見たストーンサーークルが無いから、おかしいとは思っていたんだ」

 高木は酔いも手伝い興奮して叫んだ。

 語り部とマリーンは呆れたように興奮する高木を見つめていた。

「このスートンサークルは、直径の大きさ四〇〇メートルと言う、ヨーロッパで最大のスートンサークルで、一つの石としてはヨーロッパで最大の巨石も使われる筈だ。

サークルの中に小さな二つの、スートンサークルも作られる」

 と、高木が説明すると杉浦もスートンサークル建設には、非常に興味を示しこの村に残りたいと言い出した。昔の建築家を目指した頃の情熱が蘇ったようだつた。

 どうにか杉浦を説得して、取り敢えず三人で一度マリーンの村に帰る事にした。

 杉浦は一度村に帰り身の回りの整理をしてから、再びこの集落を訪れると言う事で話が付いた。その最中、メグミは皆と一緒に暮らしたいと言い出した。

 マリーンは大賛成で是非そうするべきだと言い、村領と老婆には俺が話しを付けると言い出した。高木も其の方が良いと思っていた。この村人も話せばきっと判ってくれる。

 マリーンの提案で、もう少しこの村に滞在する事にした。

 高木もそれには全く異存がない。高木はこの村のシルブリー・ヒルやスートンサークルを作る前の『ヘンジ』を良く見て、後世の遺跡と比較してみたいと考えていた。

 しかし、次第に高木の興味はストーンヘンジに向けられて行った。

 ここからストーンヘンジの遺跡はそう遠い処では無い。真南の方向に三〇キロメートルぐらいの処にあるはずだ。その事を杉浦に話すと是非行って見たいと言う。

 マリーンに話すと、周辺の様子をバンドルに聞いてくると小屋を出て行った。

 老婆の話しでは真南は山があり、その先は海が広がっていると言う。

 歩いて半日ほどの処に山がありその山を越えると、眼下に海が広がっていると言う。

 丘の上からは肉眼でも、対岸の山並は見る事が出来ると言う。

「海・・・?対岸が見える海?対岸は島なのかなぁ、海は考えられないけど・・・」

「入り江じゃないですか?アヒントンの地上絵も入り江にありましたよね」

 杉浦も、この時代は相当深く海が陸地に食い込んでおり、ソウルズベリ平原の低地には、入り江が深く切れ込んでいるのでは無いかと考えている様だった。

 マリーンは一人の漁師のように、良く日に焼けた若い男を伴い戻ってきた。

 その若者の話しでは、杉浦が予想した様に山の向こうに入り江が広がっていると言った。陸伝いに歩いていけば三日はかかる距離だと言う。入り江は波も穏やかで、簡単な筏で渡る事が出来ると判った。入り江を渡るには半日もあれば、充分だと言う事だった。

「海岸線より内陸部に入った処に集落がありました。二日滞在しましたが友好的で、生活様式もここと変わりありませんでした」

 と、集落の様子を話して若者は去っていった。

 ストーンヘンジに関しては知らないと若者は言った。どんな人達が住んでいるのかは聞き忘れてしまった。友好的な一族と言う言葉が詮索を忘れさせた原因だった。

 集落に帰るには北上、ストーンヘンジは南下、高木は行ってみたかったが、決定権はマリーンが握っている。出来たら行きたいと杉浦も消極的な意見を言った。

「ストーンヘンジなら一度行った事があるから、私も行ってみたい!」

 と、メグミが言った。マリーンは最初行き渋っていたが、メグミの一言でコロリと態度が変わった。

「ストーンヘンジが出来ていれば村人は、ストーンヘンジを作った一族と言う事は充分考えられますね」

 ストーンヘンジ行きが決まると、杉浦が嬉しそうに言った。


 

☆新聞拾い読み☆

ハバーロフスク地方における往く年の出来事のランキング

1.アムールの島々の中国への移譲2.原子力潜水艦『ネールパ』の事故3.『ダリアヴィア』の倒産4.ハバーロフスク市開基150周年の祝賀5.『スーパージェット』の初飛行5.『ダリコムバンク』の預金者たちのパニック200852-12/24-12/230週刊新聞『論拠と事実』極東版

 

コンタクトあります

 クリスマス休暇の直後に、コムソモーリスク・ナ・アムーレ国立工科大学の学長は、宇部工業高等専門学校との協力に関する協定実現のための活動を続けました。昨年の学期末に調印された協定は、学生たちの交換、学術会議の開催、共同助成金取得の申請を予定しています。宇部工業高等専門学校の幡中校長とコムソモーリスク・ナ・アムーレ国立工科大学のアナトーリイ・シピーレフ学長は、直接的な交流は真の学問に取り組む助けとなるという考えで一致しています。日出る国の政府は、新潟県の商工振興部の代表団がコムソモーリスク・ナ・アムーレのパースペクティヴなプランに接した2005年に早くも工科大学との協力に関心を抱きました。そのような会合の実施にたいする日本側の関心は、まず第一に、直接生産において地元の学者たちの開発を導入したいとの意向に起因しています。最近の訪問の際、日本側は、パースペクティヴな共同プロジェクトの資金源について伝えました。けれども、コムソモーリスク・ナ・アムーレ工科大学側には、日本のテクノロジーが高値であることに警戒心を抱く向きもありました。容易ならぬ投資の探求の際にそれらは当方の企業にとって非現実的であるかに想われました。地元のメーカーは、今もマーケティング政策のすべての方法が極東の市場に定着できるわけではないとみなしています。けれども、日本側は、マクロ経済的状況およびメンタリティーにおける差異は一時的な障壁にすぎないとみなしています。ユーリヤ・コヴァリョーヴァ記者20090115沿アムール報知)

 

安くない満足

 「各コムパートメントにトイレとシャワーのついた車両が列車に連結されるようになったと聞きましたが、本当でしょうか?」(V.コロトコーヴァ、ハバーロフスク)極東鉄道のイーンナ・ペペリャーエヴァ報道係長はつぎのように語りました。VIPクラスの新しい車両は、ヴラヂヴォストークとハバーロフスクを結ぶ列車5≪オケアーン号≫に連結されています。各2人用コムパートメント(1車両に6室)には、エアコン、DVDプレーヤー、衣装ケース、バイオトイレとシャワー室のある個別のユニット、そして、車掌さんを呼ぶためのボタンがあります。コムパートメントの扉は、引き戸ではなく、外側へ開きます。キーは、磁気カードで、乗車の際に渡されます。乗車券は、座席にたいしてではなくコムパートメントにたいして販売されます。その1枚の乗車券を1人でも2人でも(3人目が5歳未満の幼児ならば3人でも)利用することができます。料金は同じです。」。そうした車両で旅をする満足は安くはつきません。料金は、仲介手数料および保険料なしで現在12880ルーブリ40コペーイカで、柔軟に調整される運行表によって変更されます。子供料金や割引は適用されていません。20093-1/14-1/20週刊新聞『論拠と事実』極東版

 

牛乳と乳飲料

 1217日、国家会議によって採択された牛乳および乳製品に対する新しい技術規定が発効しました。それにもとづいて、粉乳を加えずに自然の牛乳からつくられた製品が牛乳「молоко」と呼ばれ、それ以外のものはすべて乳飲料「молочный напиток」と呼ばれます。(20090120太平洋の星)

(※たとえば、編集子がときどき利用しております中央市場の乳製品売り場でも、最近は両者を明確に区別した価格表示が為されています。プーシキン通り側の入口から見て左前方の一番奥の売店には牛乳「молоко」が売られています。その賞味期間は5日間だったかと思います。)

♪ハバーロフスク地方フィルハーモニー・コンサートホール(シェフチェーンコ通り7)の

2月の公演案内より♪

2/1(日)12:00】コンサート・プレゼント!「冬のワルツ」児童音楽合唱学校『トポリョーク』、ハバーロフスク市児童舞踊学校

2/1(日)18:30】トリオ『ヴラヂヴォストーク』ロシヤ連邦功労芸能家アレクサーンドル・カピターン(バヤーン)、ニコラーイ・リャーホフ(バララーイカ)、セルゲーイ・アルブーズ(バス・バララーイカ)、室内楽オーケストラ『グローリヤ』

2/6(金)18:30】極東交響楽団 芸術監督&首席指揮者イリヤー・ヂェルビーロフ 独奏者アン・ヒ・チャン(韓国) A.アルチュニャーン「トランペット協奏曲」C.フランク「交響曲ニ短調」

2/7(土)12:00N.A.リームスキイ=コールサコフ作曲「交響組曲『シェヘラザード』」34楽章 極東交響楽団 芸術監督&首席指揮者イリヤー・ヂェルビーロフ

2/7(土)18:30】ハバーロフススク初! ユニークなデュエット! 国際コンクール入賞者アルセーニイ・アーリストフ(ピアノ)、国際コンクール入賞者&V.スピヴァコーフ国際慈善基金奨学生ロスチスラーフ・シャラーエフスキイ(打楽器:木琴、マリムバ、ヴィブラフォン) 西欧、ロシヤ、現代の作曲家たちの作品。

2/8(日)18:30】ボリース・モクロウーソフ生誕100周年「秋の葉」 独唱者オーリガ&ヴァレーリイ・トカチョーフ

2/10(火)18:30】「ロシヤのノスタルジー」 p.i.チャイコーフスキイ名称コンクール入賞者ニキータ・ストロジョーフ(バス、アメリカ合衆国) ジャズ・ピアノ奏者ヴァリーリイ・グロホーフスキイ 古いロシヤの歌曲

2/11(水)12:00小ホール】子供たちのための人形音楽劇「ダチョウの子ロッキー」 人形プロジェクト主宰者オクサーナ・ナリヴァーイコ

2/14(土)17:00】フィルハーモニー劇場『ゲリコーン』 『吹雪』(A.S.プーシキンの命日に寄せて) マリーナ・クンツェーヴィチ(語り)、ヴラヂーミル・ブードニコフ(ピアノ)

2/14(土)18:30】「聖ヴァレンタインデー」(愛の歌) アンサムブル『極東』の演奏会 芸術監督・ロシヤ連邦功労芸能家セルゲーイ・オサードチイ

2/15(日)18:30】「人生、創作、愛」 R.シューマン、I.ブラームスの音楽作品 フィルハーモニーのアーチストたち

2/20(金)18:30】室内楽団『セレナーダ』 国際コンクール入賞者ヴィークトル・クリコーフ(タムボーフ)指揮 D.ショスタコーヴィチ「室内交響曲」、O.レスピーギ「古い歌と舞曲」組曲第3番、A.ウェーベルン「緩やかな楽曲(弦楽合奏のための緩徐楽章?)」、G.プッチーニ「菊の花」

2/21(土)18:30】オルガン音楽の夕べ 共和国バシコルトスターン功労芸能家ヴラヂスラーフ・ムルタージン独奏 J.S.バッハ、C-M.ウィードル、D.カッチーニ、F.シューベルト、G.ベームのオルガン作品

2/22(日)12:00】家族みんなのために! オルガン音楽のマチネー・コンサート 共和国バシコルトスターン功労芸能家ヴラヂスラーフ・ムルタージン独奏 J.S.バッハ、C-M.ウィードル、D.カッチーニ、F.シューベルトのオルガン作品

2/22(日)18:30】「白いワルツ」 祖国防衛者の日を祝って フィルハーモニーの独奏者エレーナ・クレートヴァ、ヴィークトル・ステツェーンコ、インストルメンタル・グループ『ALLEGRIA

2/25(水)12:00小ホール】フィルハーモニー四重奏団『アレグロ』 「作曲家たちは子供たちに」 S.プロコーフィエフ、B.バルトーク、K.ドビュッシーほかの子供たちのための作品

2/25(水)18:30】「すべての音楽の泉は愛」 独奏者リュドミーラ・シェフチューク、出演:イリーナ・バトラチェーンコ、社交ダンス極東チャムピオンのデュエット『ヴィザヴィー』 20世紀のロシヤの作曲家V.ジュルビーン、A.ペトローフ、V.シネンコほかの作品

2/28(土)18:30】極東交響楽団 国際コンクール入賞者ヴィークトル・クリコーフ(タムボーフ)指揮 独奏者ヴラヂーミル・ブードニコフ(ピアノ、ハバーロフスク)、I.ブラームス「交響曲第1番」、N.メートネル「ピアノ協奏曲第3番」、S.ラフマーニノフ- O.レスピーギ編「絵画的練習曲」

(※チケットの予約&問合せの電話番号は32-89-5131-61-34、コンサートホールのチケット売場の電話番号は31-63-68、サイトはwww.phildv.ruです。

ラヂオの冬季周波数

NHKワールド・ラジオ日本」放送時間・新周波数表20081026日〜2009329


東南アジア向け>

日本時間   kHz

日本語 11.00-12.00 11860

11.00-14.00 17810

       17.00-19.00 11740

       19.00-02.00 11815

       02.00-04.00  7225

       06.00-07.00  7225

       07.00-09.00 11665

 

<<アジア大陸向け>

          日本時間   kHz

日日本語 11.00-14.00 15195

        16.00-17.00  9750

        極東ロシア   6145

        極東ロシア   6165

17.00-02.00  9750

        02.00-04.00  6035

        05.00-07.00  6085

        05.00-09.00 11910

         06.00-07.00  7255

7        07.00-09.00 11665

 

露語   12.30-13.00 15300

        22.30-23.00  6190

(以下、極東ロシア向け)

14.30-15.00 11715

       14.30-15.00 11760

       17.00-17.30 6145

       17.00-17.30 6165



◎ロシヤ国営ラヂオ「ロシヤの声」日本語放送・新周波数表

20081026日〜2009228

日本時間 21.00-22.00  中波 630 720  短波 5920      6170 6180kHz

日本時間 22.00-23.00  中波 630 720  短波 5920 6005 6170 6180kHz

200931日〜2009328

日本時間 21.00-22.00  中波 630 720  短波      6170 6180 9495kHz

日本時間 22.00-23.00  中波 630 720  短波 6005 6170 6180 9495kHz

(※受信環境によってラヂオによる聴取が困難な場合がございます。)

*HPアドレス http://www.ruvr.ru (日本語直通 http://www.ruvr.ru/index.php?lng=jap

*リスナーズクラブ『日露友の会・ペーチカ』http://www.geocities.jp/pechika041029/


(上記のサイトでインターネット放送(リアルオーディオ&オンデマンド)をお聴きいただけます。)


*ハバーロフスク支局では番組『シベリヤ銀河ステーション』のコーナーに友情出演してくださる方を募集しております。スタヂオ見学もどうぞお気軽に。(21-41-0732-45-46 / 岡田)

 

【編集後記】次号の原稿の締切りは、20093月末日です。趣味のお話し、イヴェント&暮らしの情報、離任着任メッセージ、詩歌やエッセイ、旅の思い出など、みなさま、お気軽に編集担当(岡田和也)までお寄せください職場32-45-46自宅пFax21-41-07/メールokada@mail.redcom.ru)。首を長くしてお待ちしております。